軽油と灯油をそれぞれドラム缶で買いに行くよう頼まれました。
そのような車を見た記憶がないので、
「何かしらの法律に違反するのでは?」
と思い問題ないのか調べてみました。
結論:フルサービスのガソリンスタンドで購入するなら問題なさそう
フルサービスのガソリンスタンドで購入し、家まで持ち帰る分には法律に違反することは無さそうでした。
ただし、運搬容器の外部に法律に定められた表示が必要です。
持ち帰った後の貯蔵に関しては、火災予防条例によるようなので、その地域の条例次第ですが、個人で軽油200L、灯油200Lであれば、多くの場合、届け出や許可は必要ないようです。
ただし、貯蔵する場所は火災予防条例の条件を満たす必要はあるようです。
危険物について
軽油、灯油ともに危険物なので制限があります。
軽油、灯油ともに、第四類で第二石油類でした。
危険物としての分類は同じなので、灯油の制限は軽油の制限を参照すればよさそうです。
別表第一(第二条、第十条、第十一条の四関係)
備考
十四 第二石油類とは、灯油、軽油その他一気圧において引火点が二一度以上七〇度未満のものをいい、塗料類その他の物品であつて、組成等を勘案して総務省令で定めるものを除く。
ちなみにガソリンも危険物で、第四類で第一石油類でした。
別表第一(第二条、第十条、第十一条の四関係)
備考
十二 第一石油類とは、アセトン、ガソリンその他一気圧において引火点が二一度未満のものをいう。
購入、運搬について
購入に関する制限、容器の制限、運搬の制限は下記リンクが分かりやすいと思います。
https://fd-ofunato.jp/anzen_ansin/image/hayamihyou.pdf
各危険物の指定数量は下記を参照ください。
https://www.city.akune.lg.jp/material/files/group/93/file151.pdf
200Lのドラム缶を2つ積んで、軽油と灯油をそれぞれ200L購入し、運搬することに問題は無いようです。
セルフスタンドについて
セルフスタンドで客は下記は行えるそうです。
・給油設備で自走する車両の燃料タンクに給油すること
・注油設備で灯油または軽油を容器に注油(詰め替え)すること
ドラム缶は自走する車両の燃料タンクではないので、給油設備で注油することはできません。
注油設備で注油する必要があります。
多くのセルフスタンドでは、軽油は給油設備しかなく、注油設備が無いため、客が容器に注油することはできないようです。
灯油は注油設備があれば容器に注油することはできますが、荷台の容器に注油することができるかは販売店によると思われます。
(顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所)
第二十八条の二の四 令第十七条第五項の総務省令で定める給油取扱所は、顧客に自ら自動車若しくは原動機付自転車に給油させ、又は灯油若しくは軽油を容器に詰め替えさせることができる給油取扱所とする。
(顧客に自ら給油等をさせる屋外給油取扱所の特例)
第二十八条の二の五 前条の給油取扱所に係る令第十七条第五項の規定による同条第一項に掲げる基準を超える特例は、次のとおりとする。
三 顧客に自ら灯油又は軽油を容器に詰め替えさせるための固定注油設備(以下「顧客用固定注油設備」という。)の構造及び設備は、次によること。
イ 注油ホースの先端部に開放状態で固定できない手動開閉装置を備えた注油ノズルを設けること。
ロ 注油ノズルは、容器が満量となったときに危険物の注入を自動的に停止する構造のものとすること。
ハ 一回の連続した注油量及び注油時間の上限をあらかじめ設定できる構造のものとすること。
ニ 地震時にホース機器への危険物の供給を自動的に停止する構造のものとすること。
フルサービスのスタンドであれば、
従業員は給油設備でも容器に注油することができるので、ドラム缶で購入することができるようです。
ただし、荷台の容器に注油することを拒否する店舗はあるかもしれません。
こぼれた場合、熱くなったマフラーなどにかかり、発火する可能性があるためのようです。
運搬容器の外部の表示について
運搬する量に関わらず、第四類の軽油、灯油(、ガソリン)を運搬するなら、容器外部に下記を表示する必要があるようです。
(表示)
第四十四条 令第二十九条第二号の規定により、運搬容器の外部に行う表示は、次のとおりとする。
一 危険物の品名、危険等級及び化学名並びに第四類の危険物のうち水溶性の性状を有するものにあつては「水溶性」
二 危険物の数量
三 収納する危険物に応じ、次に掲げる注意事項
ニ 第四類の危険物にあつては「火気厳禁」
表示すればいいようなので、チョークなどでドラム缶に直接書き込めばいいと思います。
Amazonなどでシールやステッカーを探してみましたが、見つかりませんでした。
ガソリン、軽油、灯油は非水溶性です。
ガソリン、軽油、灯油の品名・化学名は同一でよさそうです。
危険等級は、ガソリンは第一石油類なので危険等級II、
軽油・灯油は危険等級I・II以外なので危険等級IIIのようです。
(危険物の区分)
第三十九条の二 次条、第四十三条及び第四十四条において危険物は、危険等級Ⅰ、危険等級Ⅱ及び危険等級Ⅲに区分する。
2 危険等級Ⅰの危険物は、次に掲げるものとする。
一 第一類の危険物のうち、令別表第三備考第一号の第一種酸化性固体の性状を有するもの
二 第三類の危険物のうち、カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りん並びに令別表第三備考第六号の第一種自然発火性物質及び禁水性物質の性状を有するもの
三 第四類の危険物のうち、特殊引火物
四 第五類の危険物のうち、第一種自己反応性物質の性状を有するもの
五 第六類の危険物
3 危険等級Ⅱの危険物は、次に掲げるものとする。
一 第一類の危険物のうち、令別表第三備考第二号の第二種酸化性固体の性状を有するもの
二 第二類の危険物のうち、硫化りん、赤りん、硫黄及び令別表第三備考第四号の第一種可燃性固体の性状を有するもの
三 第三類の危険物のうち、前項第二号に掲げる危険物以外のもの
四 第四類の危険物のうち、第一石油類及びアルコール類
五 第五類の危険物のうち、前項第四号に掲げる危険物以外のもの
4 危険等級Ⅲの危険物は、危険等級Ⅰの危険物及び危険等級Ⅱの危険物以外の危険物とする。
軽油と灯油(とガソリン)の混載について
類が異なる危険物を混載することは禁止される場合がありますが、
軽油と灯油(とガソリン)は第四類で類が異なりませんので、混載しても問題ないと思われます。
(積載方法)
第二十九条 法第十六条の規定による積載方法の技術上の基準は、次のとおりとする。
六 危険物は、総務省令で定めるところにより、類を異にするその他の危険物又は災害を発生させるおそれのある物品と混載しないこと。
「危」の標識について
軽油と灯油の指定数量は1000Lなので、200Lのドラム缶2つで運搬する範囲では最大400Lとなり、指定数量未満のため「危」の標識を車両に掲げる必要はないようです。
(運搬方法)
第三十条 法第十六条の規定による運搬方法の技術上の基準は、次のとおりとする。
二 指定数量以上の危険物を車両で運搬する場合には、総務省令で定めるところにより、当該車両に標識を掲げること。
積載量について
ドラム缶の重さは厚みによりますが、200Lだと20kgくらいのようです。
軽油の比重は0.85程度、灯油の比重は0.8程度らしいです。
軽油と灯油を、200Lのドラム缶2つにいっぱいに入れると、
軽油:200L×0.85=170kg
灯油:200L×0.8=160kg
ドラム缶:20kg×2=40kg
となり、合計で370kgくらいになるようです。
軽トラの最大積載量は350kgらしいので、軽トラでいっぱいに入れてしまうと最大積載量をオーバーするようです。
ちなみに最大積載量に乗員の体重は影響しないそうなので、乗員が1人だから最大積載量が増えることはないそうです。
貯蔵について
指定数量未満の危険物を貯蔵する場合、地域の消防本部が掲げる火災予防条例に従うそうです。
よくある条例については、下記のリンクの説明が分かりやすいと思います。
家庭の場合、指定数量の2分の1未満であれば、許可も届け出も必要ないことが多いようです。
指定数量の5分の1以上貯蔵する場合、貯蔵する場所は火災予防条例の条件を満たす必要があることが多いようです。
指定数量の5分の1未満であれば、貯蔵する場所は条件が無いことが多いようです。
消防本部について
消防本部は自治体単位の場合もありますが、他の自治体に委託している場合や、複数の自治体で作った組合の場合があるようです。
自治体の例規集に火災予防条例がない場合、委託先の火災予防条例や、組合の火災予防条例を参照するようです。
消防本部が自治体単位
神奈川県横浜市の例です。
横浜市の例規集に火災予防条例があります。
消防本部が委託先
神奈川県三浦市の例です。
「「横須賀市火災予防条例」が適用されます。」とあります。
http://www.city.miura.kanagawa.jp/kyoudo/kouhou/documents/2017_2_part1.pdf
三浦市の例規集に火災予防条例は無いようです。
横須賀市には火災予防条例があるので、そちらを参照するようです。
消防本部が組合
埼玉県朝霞市・志木市・和光市・新座市の例です。
朝霞地区一部事務組合の例規集に火災予防条例があります。
各自治体の例規集に火災予防条例は無いようです。
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